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2009年7月 2日 (木)

社会全体で子どもを支えるシステムをつくる⑥

ひきこもり「問題」解決に有効なツールは手の内に、後はそれを使う明確な意志の問題

 全国で100万人のひきこもる人々。その人々を支える100万の家庭。そして毎年その仲間に入る多くの人々。これらの人々はその存在は社会から認知されているにもかかわらず、その存在の特殊性からいわば社会的支援から見放されている人々です。とりあえずは自分と関係がない人々を愛することは難しい。想像力を働かさなければふだん出会うことはない人々です。しかしわたしたちは、今ここであのイエスが「幸い」といった言葉を思い出します。

この「幸い」という言葉を世俗における世界共通語に翻訳すれば、人権という言葉が適当でしょう。世界人権宣言の第1条に「互いに同胞の精神を持って行動しなければならない」とあります。人権とはどのような境遇にある人にも(たとえそれが監獄にいる犯罪者であっても)人である限り等しく与えられる権利です。人権に優劣とか多い少ないはありません。人権にとって大切なことは、自分の人権を大切にしたいのであれば、他者の人権をも自分と同じように尊重しなければ意味がないということです。他者の人権をないがしろにしたところに自分の人権はありません。

ひきこもりはこの稿のはじめに書きましたように第1義的には病気でも障害でもありません。何らかの社会的ストレスから回避するための緊急避難的反応で、その反応(行為)そのものは正常でなんら問題はありません。ですから、ひきこもることを悪者にしてそれをなくすという方向で諸策を講じることは的を射たものとはいえません。ただ、ひきこもり状態が必要以上に長引くことから生じるさまざまな問題は放置するべきではないと思います。その問題は家族だけではなく、社会全体が担うものです。そしてわたしたちはその問題解決のために有効なツールを潜在的にはかなり持っているのではないかと思います。ひきこもり「問題」がわたしたちに投げかけていることは、先の児童労働のところでもふれたように、最終的には問題解決に向けた社会の強い意志その一点にかかっているのではないかと思います。つまり、この問題に社会全体で本気で取り組む覚悟があるのかと問われていること。高齢者介護も大事ですが、次の社会を担う若者の社会参加と社会的自立を促すため社会全体が揺り動かされるような仕組みができないものかと想像力を働かせてみるのです。

わたしたちは児童労働の報道を見聞きするたびに心が痛みます。児童労働の原因はますます広がる経済格差、貧困です。その貧困の原因の片方の当事者である私たちの社会にも別な意味での貧困があります。世界や他者と生き生きと出会うことができない心の闇。心の目で見れば、この二つの貧困はコインの表と裏の関係にあります。2000年前のエルサレムでイエスは弟子たちに互いに足を洗うという模範を示しました。このことが長い歴史を経た今も私たちの社会が指摘されるべきいちばんの問題であるこということは、驚きでもあります。進歩とは一体何なのでしょう。私たちは、今、この世界でわたしたちに与えられた責務を潔く引き受けて、できることならば、受け取ったときよりは少しでもましな状況で次の世代にバトンを渡したいと心から願います。

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